ナビィの恋


 主人公のおばあさんは東金城ナビィというのだが、ナビィって名前は沖縄にむかしはよくあった名前なんだろうか?恩納村の泡盛にもそんな名前のがあったけど。
 さて、ここで問題。「東金城」はどう読むでしょう?「あがりかなぐすく」、ひょっとしたら「あがりかにぐしく」かもしれない。「城」を「ぐすく」と読むのは「沖縄地名・人名クイズ」としては初級編、古代の「グスク」と呼ばれた建造物が日本の「城」に似ていたことからこの字が当てられた。沖縄には宮城さん、玉城さん、金城さん、城間さん、新城さんなど「城」のつく人名がやたら多いが、たとえば「新城」の場合、「しんじょう」なのか「あらしろ」なのか「あらき」なのかあるいは「みぃぐすく」なのかみんな困らないのかなぁ?不思議だ。
 名前ついでに話を脱線させると、沖縄で一番多い名字は「比嘉」さんだそうで、そういえば名護市の前市長も甲子園で優勝した沖縄尚学高校のピッチャーも比嘉さんだった。私は今こちらで塾の講師をしているんだけど、沖縄では生徒同士のみならず先生が生徒を呼ぶときもファーストネームを使うことが多いのね。そうゆうの慣れてないから抵抗があったけど、名簿見て納得した。同じクラスに「比嘉」さんが5人、「宮城」さんが4人ぐらいいるんだもの・・・。
 「東」をどうして「あがり」と読むんでしょうか?太陽が上がる方角だからなんですね。名護には「東江(あがりえ)」って地名があるし、「東江メガネ」って言えば「内地」でいうなら「ビジョンメガネ」みたいなどこにでもあるチェーン店だ。同じ理由で「西」は「いり」なんですね。「西表島」は「イリオモテ」でしょ?さすがは「海人(うみんちゅ)」の島ですな。
 では、これはどうでしょう?「南風原」、「東風平」、いずれも沖縄本島南部の市町村名です。「南風」を「はえ」、「東風」を「こち」と呼ぶのもやはり船乗りの習慣なのだろう。「原」を「はる」と読むのは九州でも見られる。正解はそれぞれ「はえばる」、「こちんだ」でした。
 ところが、沖縄自動車道に那覇から入って二番目のインターチェンジが「西原」、これを何と読むかというと、なんとそのまんま「にしはら」なのね。おこるでぇしまいにぃ!
 上級コースの沖縄・地名クイズを出題しよう。正解者の中から抽選で3名の方に恩納村、北谷町に展開するオリジナルTシャツの店「HABU・BOX」の人気商品「センソウッテ、カッコイイ?」を差し上げましょう。miyagawasusumu@hotmail.comまでご応募ください。
 一番、「為又」、これは名護市からの出題。バイパス沿いに大規模店舗が展開している「新都心」です。「カプリチョーザ」もついに名護までやってきちゃったよ。
 二番、「勢理客」、浦添市にあります。初めてバスのアナウンスでこれを聞いたときはたまげたね。
 そして三番、きわめつけでしょう。沖縄の人でも読めない人が多いことは実証済み。「保栄茂」、豊見城村(とみぐすくそん、でも「とみしろ」って呼ぶ人も多い)にある地名だそうです。

 閑話休題。パレット市民劇場でのプレビューが終わって、同じ建物の一階下の「りうぼうホール」公開の初日は祝日だったこともあってものすごい混雑だった。前売りを買っていても2回3回後の整理券をもらって並ばなければならなかった。
 観客は圧倒的に、老人が多い。娘や孫に連れてこられたおじいさんおばあさん、友達同士でやってきたおばあさんおじいさん、じいさんばあさんばあさんじいさん、ともかくいちめん「老人の海」!長寿国沖縄には「老人映画」というジャンルが成り立つのではないか?などと考えてしまう。
 また、彼らが平気でしゃべること、笑うこと。昔懐かしい(沖縄では今でも現役だろうが)公民館の演芸会のりだね。西武系のこじゃれたスノッブ系映画館も形無しだ。
 方言がわからなくて、笑いに取り残されてちょっとさびしい思いをすることもあった。全編粟国島(あぐにじま)でロケされてるんだけど、その粟国の公民館のそれこそ演芸会のシーン、大阪の売れない芸人がドサ回りで司会をやっているって設定で、実際にヨシモトの、ごめん名前忘れちゃった、あんまりぱっとしないお笑いが出てくるんだけど、劇中でもうけない、そして映画館の中でも全然うけない、なのに私一人笑っちゃった。大阪の血だね。

 移民の歴史と戦争に引き裂かれたナビィの悲恋。笑えて、泣けて、文句なく超一級の娯楽映画です。さっきまでげらげら笑ってたばあさんが、こんどはぐすぐす鼻すすってんの。
 全編を彩る「十九の春」の旋律、「夢幻・琉球・つるヘンリー」にも出ていた大城さん(名前忘れちゃった)とデュエットしていた沖縄民謡界の重鎮、嘉手刈林昌はこの映画が遺作となった。
 それにしても、同じく沖縄民謡界の重鎮にして、マイケル・ナイマン等とも交流のある世界的な音楽家、登川誠仁がこんなに面白い人だとは思わなかったね。

 1月二日から十三日まで、りうぼうホールで追加上映決まりました。東京や関西でもやるのかなぁ?ぜひご覧になってください。

 ラストシーンは、東京から戻ってきた主人公の女の子が粟国に住みつくことをきめ、内地からの旅行者の青年と結婚し、ぽこぽこ(!)子供を産んで、そのお祝いに村の人たちが集まってうたって踊る大団円なんだけど、そんな「豊饒」と「再生産」へのゆるぎない確信、セックスに対する「アルカイック」な礼賛みたいなのを目の当たりにすると、私なんかはちょっとさめてしまうんですけど、それも含めて沖縄のすごいところであり、また、ちょっと、だめなところでもあるんですね。三月も住むとこんなことも言えるようになりました。

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99/12/30 宮川 晋 miyagawasusumu@hotmail.com