「V23式猫型ロボット」の日々


「V23式猫型ロボット」、アルバム、もうひとつ・「解説」つき?


また猫が増えてしまった。23匹目。愚かとしか言いようがないね。
言い訳、にもならんが、今回は自分で拾ったわけじゃない。梅雨前線が南西諸島上空におよそ一週間ばかりも停滞し、激しい豪雨が続いた。野良猫たちもさぞかし大変だったろう、隠れ場所を見つけられたとしても、あんな降り方が何日も続けば餌を探しにいくチャンスもない。
そんな風に母親とはぐれてしまったんだろう、塾の生徒さんが少し晴れ間の見えたある日、子猫を見つけて拾ってしまったらしい。家につれて帰ると親に、「捨ててきなさい!」、よくある話だ。

予備校の昼間部に来ている生徒さんたちなんだから、来年は大学生になる、大半が「本土」の大学を目指していて、つまりほどなくこの島を離れるわけだから、自分の判断で猫を飼うなんて言えるわけない。困り果てた子供たちは、講師の一人の「変態猫おやじ」に白羽の矢を立てたのだろう。
「自習室」の隅の段ボール箱の中で、その毛むくじゃらのかたまりは眠っていた。亜熱帯の6月だけど、雨が降り続いたから子猫にとっては寒いかもしれない。古着のセーターが敷いてあって、「捨てて来い!」という割には、やさしいじゃない?

拾ってしまったんだから、捨てるわけにいかないんだから、だったらつれて帰るしかないだろう?その程度しか考えがまわらないから、だから私は「愚か」なんだ。 モノレールに乗って一度家にとって返し、猫用のケージと新聞紙、ドライフードはまだ食べられないだろうから、パウチ入りのウェットフードなど、を用意して再び出勤。どこの世界に猫のかご持って出勤するサラリーマンがおる?予備校の自習室で猫に餌やってどうする?従業員にあるまじきことなのだが、ちゃんとつれて帰るから、一日だけ、大目に見てもらおう。

生徒さんたちも、この小さな珍客の到来に少し華やいでいる。子猫が餌と格闘している様をみんなで囲んでヤンキー座りして見守るの、なかなかいいじゃない?

さて名前だ。さすがに23匹目となるとネタも尽きる。拾った場所とかも知らないから、あやかるべきデータもない。目が青くて、長毛、耳の先、花と口、肉球は黒。顔を眺めてみても何も思い浮かばん。苦しまぎれに「V23号」。ここの予備校の名前が「Vなんとか・・」って言うんだよ。

新しい猫を連れてくると今まで飼っていた猫がすねて家を飛び出してしまった、とか、けんかするから飼えない、とか言うじゃない?うちの場合はそんな生易しい段階はとうに過ぎているから、猫たちに「耐性」ができてしまったのだろうか?多少いじめたり、けんかしたりはする。「すねた」意思表示なのか、トイレ以外でおしっこしたりも、する。でも、すぐ、なれる。一週間もすれば、何事もなかったかのように固まって眠っている。

小さいから冷蔵庫の後ろの隙間なんかに入り込んでしまう。危なっかしいから、出かけるときや寝るときは、ケージに閉じ込める。餌も、こいつだけ子猫用の上等なウェットフード、「サイエンスダイエット・グロース」、だからほかの猫たちに横取りされないよう、ケージの中で与える。子猫は胃袋が小さいから、一日に何度も食べるしね。
酔いつぶれて眠って、ケージに入れ忘れたことがあった。夜中に目を覚まして、あ、あのちっこいのどこだろう、踏んづけたら大変!とあせったが、耳元になんか生暖かい毛のかたまり、私の顔の横で眠ってた。うれしかったね、和んだね、癒されたね、もちろん!

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