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[命題] 2以上の整数a,bに対して、
P | → | Q |
ab-1が素数 | ならば、 | a=2であり、かつ、bは素数である |
[対偶] 2以上の整数a,bに対して、
¬Q | → | ¬P |
a=2でないか、または、bは素数でない | ならば、 | ab-1は素数でない |
- 「素数である」は、「1とそれ以外に約数をもたな・い・」と、否定文でしか定義できない言葉であるから、肯定文に転換しなければ証明できない。
- 命題の結論部分を否定から肯定に転換するには、「背理法」と「対偶」のいずれも用いることができるが、条件部分を否定から肯定に転換するには、「対偶」しかない。

 |  | = |  |  |
[命題] | | [背理法] | | [対偶] |
「AならばB」 が真である | | Aであり、かつ、 Bでなければ、 矛盾が生ずる | | 「¬Bならば¬A」 が真である |
ここで、
- P : ab-1が素数であること
- A : a=2であること
- B : bが素数であること
とすれば、証明したいのは、
である。ここで、
であるから、
その「対偶」をとると、
、「ド・モルガンの法則」から、
さらに、
であるから、
すなわち、
- a=2でないならば、ab-1が素数でないこと、かつ、
- bが素数でないならば、ab-1が素数でないこと、
を示せばよいことがわかった。
[証明]
- a
2ならば、
f(x)=xb-1とおくと、
f(1)=1b-1=0であるから、
f(x)は(x-1)で割り切れる。すなわち、ab-1は(a-1)で割り切れる。
ここで、bは2以上の整数であるから、ab
a、すなわち、ab-1
a-1
したがって、ab-1はそれ自身以外の数a-1を因数にもつ。
ここで、a
2すなわち、a-1
1であるから、
ab-1はそれ自身と1以外の因数a-1をもつことになり、素数でないことが示された。
- bが素数でないならば、
すなわちb=lmを満たす、いずれも1以外の正の整数l,mが存在する、ならば、
ab-1=alm-1は(al-1) , (am-1)を因数にもつ。
なぜなら、
- f(x)=xm-1とおくと、f(1)=1m-1=0であるから、f(x)は(x-1)で割り切れる。
すなわち、alm-1は(al-1)で割り切れる。
- g(x)=xl-1とおくと、g(1)=1l-1=0であるから、g(x)は(x-1)で割り切れる。
すなわち、alm-1は(am-1)で割り切れる。
- l
1 , m
1であるから、al-1
1 , am-1
1
なぜなら、もし、al-1=1 , am-1=1、すなわち、al=2 , am=2、ならば、これはa=2、かつ、l=m=1、のときに限られるからである。
- l
1 , m
1であるから、al-1
alm-1 , am-1
alm-1
よって、ab-1はそれ自身と1以外の因数(al-1) , (am-1)をもつことになり、素数でないことが示された。
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[命題] 2以上の整数a,bに対して、
P | → | Q |
ab+1が素数 | ならば、 | b=2cとなる整数cが 少なくとも一つ、存在する |
[対偶] 2以上の整数a,bに対して、
¬Q | → | ¬P |
いかなる整数cに対しても、 b=2cとならない | ならば、 | ab+1は素数でない |
- さて、「対偶」をとったおかげで、「素数である」と言う「否定文」を回避することはできたが、条件部分¬Qが「いかなる整数cに対しても、
b=2cとならない」とあらたに「否定文」を含むようになってしまった。
この部分を多少書き換えないと、大変扱いにくそうである。
- Qは、「bは2以外の素因数を、決してもたない」という内容である。ならば、
- ¬Qは、「bは2以外の素因数を、少なくとも一つ、もつ」になる。
- ところで、f(x)=xm+1に対しては、f(-1)=(-1)m+1であるから、
mが奇数のときのみ、f(x)が(x+1)で割り切れると断定できる。
このロジックを使いたいので、「bは奇数を因数にをもつ」と、いいたい。
2以外の素数はすべて奇数であるから、
- ¬Q:「bは2以外の素因数を、少なくとも一つ、もつ」、は、
- ¬Q:「bは1以外の奇数の因数を、少なくとも一つ、もつ」、と、
書き換えてもよさそうである。無論、奇数には素数でないものも含まれるが、それらはすべて奇数の素数のみからなる合成数、であるから、
- ¬Q:「bは1以外の奇数の因数を、少なくとも一つ、もつ」、ならば、
- ¬Q:「bは奇数の素因数を、少なくとも一つ、もつ」、
といえる。すなわち、
- ¬Q:「bは1以外の奇数の因数を、少なくとも一つ、もつ」、は、
- ¬Q:「bは奇数の素因数を、少なくとも一つ、もつ」、
の「十分条件」である。そこで、証明すべき命題として、次の形を採用する。
[対偶] 2以上の整数a,bに対して、
¬Q | → | ¬P |
bは1以外の奇数の因数を、 少なくとも一つ、もつ | ならば、 | ab+1は素数でない |
[証明]
bは1以外の奇数の因数を、少なくとも一つ、もつから、
正の整数l,mをもちいて、
b=(2l+1)m
と書くことができる。
ここで、f(x)=x2l+1+1とおくと、f(-1)=0であるから、f(x)は(x+1)で割り切れる。すなわち、
(am)2l+1+1は、am+1で割り切れる。
- ここで、l
0であるから、am+1
(am)2l+1+1
- また、am+1
0
すなわち、(am)2l+1+1は、1でもなく、それ自身でもない因数am+1をもつから、素数でない。
すなわち、ab+1は素数でない、ことが示された。