仮平均の仕組み。
下の「例2」、例えば、6人の身長データ、を、棒グラフにしてみた。「平均」と言うのは、でこぼこの地面のとびだした土を削って、へこんだところに埋め合わせるのに似ている。はじめは、どこまで「掘れば」よいかわからないから、適当に削ってみる。削った土が足りなかったら、もっと削る。多過ぎたら、余った土を全体に均す。
ここでは、切りのいい170を「仮平均」にして、そこから外れた値だけについて平均を取る。それを「仮平均」に足せば、真の「平均」になる。
- 練習1 100点満点のテスト、10人の得点。
- おおざっぱに全体を眺めて、だいたい70ぐらいが平均になるかな？、と見当をつけて、それを「仮平均」にしてみる。
- 各得点から「仮平均」70をひいたものを右の欄に記入。これを上から下まで足して、人数で割る。
- その値を、「仮平均」70に加えて、出来上がり。
- 練習2 こちらは、身長6人のデータ。「仮平均」170にしてみた。
- 練習3 100点満点のテストの20人の成績。
これを「原データ」と呼ぶことにする。順位を付けて、「中央値」を求める。「中央値」は、「上から数えても、下から数えてもちょうど真ん中」、ただし、偶数個のデータでは、「真ん中」がないので、そのすぐそばの二つの値の「平均」。ここでは、20件のデータだから、第10位と第11位の得点の平均を求める。
次に、10点ごとの「階級」に区分して、「度数分布表」を作る。- 「階級値」とは、階級区分の両端の値の平均値、本当は、個々のデータは異なる得点なのだけど、この階級に所属する全てのデータが、「階級値」をとっていると仮定して、計算を少し楽にする。
- 「原データ」の表を見ながら、各階級に属する「度数」を数えて記入。
- 「度数」の右側には「累積度数」、その階級までの「度数」の合計、を書く。（下の表の矢印のように「足し算」していく。）
- 「階級値による平均値」を計算し、「原データ」による平均値と、どのくらい違うかを見てみよう。
- 「最頻値（モード）」は、「度数」が一番多い階級の、「階級値」。
- 「階級値による中央値」も求めてみよう。「累積度数」の欄から、第10位と第11位がどの階級に属しているかをチェック。同じ階級にいれば、その「階級値」、異なった階級にいれば、その「階級値」の平均値。
「原データ」による「中央値」と、どのくらい違うだろうか？
「度数分布」のヒストグラムは、分布の広がりの様子を示す。「累積度数分布」のヒストグラムは、右上がりではかならず、右端が、全データ数になっているはずだ。
- 練習4 20人の身長データ。小数点以下の細かい数値なので、階級区分をして扱うメリットが大きい！
- 定義式による「分散」は、「偏差の2乗の平均値」。
- 「偏差」は、各データから「平均値」をひいたものだから、当然プラス、マイナスに分かれる。そのまま足したらちょうど打ち消し合って必ず0になるから、それでは「分布の広がり」がわからない。だから、2乗してからたす。
- でも「分散」の値を見ても、それは例えば「点数」の2乗、みたいな単位をもっているから、「意味」がよくわからない。そこで、その（正の）「平方根」を取ると、これが「標準偏差」。
「標準偏差」には統計学的に、こんな意味がある。十分データ数が大きい場合、多くの現象が、「正規分布」と呼ばれる分布形（↑）を取る。その「理論値」によれば、- 平均値プラスマイナス1標準偏差の間に、全体の約68パーセントのデータが、
- 平均値プラスマイナス2標準偏差の間に、全体の約95パーセントのデータが、
「標準偏差」は、どこまでが「普通」で、どこからが「異常」かを、判定する基準、といってよい。
- 練習5 20点満点テスト、10人の成績。
「分散」の計算には2乗がつきものなので、数値が大きくなる。「平均」に端数が出ると、「偏差」にも端数、その計算は膨大なものになる。
だから実際に「世の中」では、この「定義式」は使い物にならない。センターテストの題材の「つくりもの」のデータでは、「平均値」がちょうど整数値になるように工夫されているから、やっていけるのだ（！）と理解されたい。 ここでも、もちろん、そういうデータにした。
「標準偏差」は電卓でもないと、普通は計算できない。ためしに、このデータのヒストグラムを作ってあるから、上の「理論」に照らして、平均値プラスマイナス1から2標準偏差の間に、どのくらいのデータが収まっているか、書き入れて調べてみよう。
- 練習6 20人の身長の度数分布表。
まず、こんなデータが与えられたとき、 - 平均値
- 中央値（メジアン）
- 最頻値（モード）
- 分散と標準偏差
- 度数分布データでは、その階級に属する全データが「階級値」を取っていると考える。だから、「階級値」を書き込む欄がいるだろう。
- 「平均値」を計算するには、「合計」を知る必要がある。ということは、「階級値」に、その階級に属する人数をかけた値を書き込む欄が必要だ。
- 「分散」は、「偏差」の2乗の平均、なのだから、「偏差」を書く欄も、「偏差の2乗」を書く欄も、・・・、「偏差の2乗」に人数をかけた値を書く欄も、いる。
下に計算結果を示す。「標準偏差」はもちろん、電卓を使わないと算出できないから、おおよその値でいい。
ついでに、「ヒストグラム」を作って、その中に、「平均」と、「平均プラスマイナス1標準偏差」、「平均プラスマイナス2標準偏差」のラインも書き込んでみよう。
- 「中央値（メジアン）」は？・・・全体の人数が20人だから、どちらから数えても、第10位と、第11位の平均を取ることになる。
身長の低い者から数えて第10位は、「150以上160未満」の階級、第11位は、「160以上170未満」の階級、それぞれの「階級値」は155と165、その「平均」で160が「中央値（メジアン）」。 - 「最頻値（モード）」は？・・・「160以上170未満」の階級に属する人数が7人で、最大だから、その「階級値」165が、「最頻値（モード）」。
- 練習7 まったく同じような作業を、次の、20人の体重の度数分布表、についてやってみよう。
「中央値（メジアン）」は65、「最頻値（モード）」は65。
ところで、「世の中」では、「分散」を計算するのに、「定義式」では役に立たない。「平均値」がそんなに切れのいい整数値になったりすることは、まず期待できないからだ。
そこで、上のような式変形から、「分散」は、「『2乗の平均』引く『平均の2乗』」によっても計算できることがわかり、実際にはもっぱらこちらが用いられている。これを「実用式」と呼ぶことにする。
センターテストで扱われる「統計学」は、ごく入門的なものであるので、ここまで知る必要はない、と大学入試センターが考えているのかもしれないが、これまでのところ、過去問で、この式を用いる計算を問われたことは、ほ・ぼ・、ない。しかし、全く知らずにおくこともできないので、以下の例で確認しておこう。
- 練習8 10点満点のテストの、6人分のデータ。
「定義式」による計算と、「実用式」による計算を比較できるようにした。一番右の欄、得点をいきなり2乗して、その平均をとる（33.1666...）。そこから、平均値(5.5)の2乗(30.25)をひけば、確かに、「定義式」で計算したものと同じ値になっているであろう？
しかし、このデータはあくまで、「平均値」が5.5と、比較的切りのいい、割り切れる数になっている、作・り・物・の・データだということを忘れないように！
- 練習9 10点満点のテストの、6人分のデータ。
試しに、上のデータから少しだけ、値を変えてみた。番号2番の得点が1点上がっただけで、平均値はもう割り切れない（5.666...）、そうなると「偏差」ましてや「偏差の2乗」も、大変な数値になってしまって、手計算はほぼ不可能になる。表中「イタリック」で表したのが、その様子である。
それに対して、「実用式」ならば、割り切れない平均値(5.67)を一度だけ2乗しなければならないものの、「2乗の平均(36)」から「平均の2乗(32.11)」を引いて、「分散」(3.89)をなんとか計算することが可能なのである。
同じく2変量の関係、といっても、「身長と体重」のように、普通一方が増えれば他方も増えるだろう、と簡単に予想できる場合もあれば、「摂取した薬品の量と、病状の改善の度合い」などのように、両者の関係は慎重に調べてみなければならないものもある。
そのような「統計調査」に必要なのが、「共分散」と「相関係数」である。
- 一方(x)が増えれば他方(y)も増える、とき、これはx-y平面上に各データをプロットすれば「右上がりの直線」すなわち「傾きが正の直線」に沿って並ぶだろうから、「正の相関」がある、という。
- 一方(x)が増えれば他方(y)は減る、とき、これはx-y平面上に各データをプロットすれば「右下がりの直線」すなわち「傾きが負の直線」に沿って並ぶだろうから、「負の相関」がある、という。
- 相関の「正・負」は、「共分散」の符号でわかる。
「共分散」は、「偏差の積」、すなわち「xの偏差」と「yの偏差」をかけたもの、の平均値である。- 「xが平均より高く、yも平均より高い」、人や、「xが平均より低く、yも平均より低い」、人が多ければ、この値は正になるだろう。
「散布図（相関図）」の右上と左下に多くのデータが集まる。 - 「xが平均より高いのに、yは平均より低い」、人や、「xが平均より低いのに、yは平均より高い」、人が多ければ、この値は負になるだろう。
「散布図（相関図）」の左上と右下に多くのデータが集まる。
- 「xが平均より高く、yも平均より高い」、人や、「xが平均より低く、yも平均より低い」、人が多ければ、この値は正になるだろう。
- 次に、相関の「強さ」を考える。これは、直線のまわりに、データを表す点が、密集している度合いを表す。
- 直線のまわりに点が集中していれば、相関関係がよりはっきりとわかる。これを「強い相関がある」という。
- 直線関係は認められても、点がバラバラではっきりしない場合、相関関係についてあまり明確なことは言えない。これを「弱い相関である」という。
- 「相関係数」rは、「共分散」をxとyのそれぞれの「標準偏差」で割ったもの。
だから、「共分散」と「相関係数」はかならず、符号が同じ。相関の「正・負」は、「相関係数」の符号を見ればわかる。
また、「相関係数」は、1とマイナス1の間の数しかとれない！、「絶対値」が1に近いほど「強い相関」を表す。
 |  |  |  |
| 強い正の相関 | 弱い正の相関 | 強い負の相関 | 弱い負の相関 |
以下に、これら4パターンを例を挙げて、計算練習してみる。いずれも、100点満点テスト2科目分、例えば、xが「英語」でyが「数学」、などと思えばよい。
- 練習10 共分散・相関係数（定義式による）。「強い・正の・相関」型
- x,yそれぞれについて、「平均・分散」が計算できるような表を作る。つまり「偏差」、「偏差の2乗」の欄を作る。
- さらに、その右側にx,yの「偏差の積」を計算する欄を設ける。
「偏差の積」の合計を計算してこれを人数で割る。これが「共分散」。「偏差の積」も、その合計も負になる可能性があることに注意！ - 「共分散」をx,yそれぞれの「標準偏差」すなわち「分散」の平方根の積で割る。平方根は電卓がなければ計算できないことが多いから、だいたいの値でよい。
- 「散布図（相関図）」に、横軸x、縦軸yでデータをプロットしてみて、相関係数の値も参考にしながら、相関の「正・負」、「強さ」について、調べよう。
- 練習11 共分散・相関係数（定義式による）。「弱い・正の・相関」型
- 練習12 共分散・相関係数（定義式による）。「強い・負の・相関」型
- 練習13 共分散・相関係数（定義式による）。「弱い・負の・相関」型
11
12
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- 練習11(解答) 共分散・相関係数（定義式による）。「弱い・正の・相関」型
- 練習12(解答) 共分散・相関係数（定義式による）。「強い・負の・相関」型
- 練習13(解答) 共分散・相関係数（定義式による）。「弱い・負の・相関」型
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「分散」の場合と同じ理由で、「共分散」の計算でも、「世の中」では「定義式」は通用しない。ここでは、念・の・た・め・、簡単な一例だけ挙げて、「実用式」による計算練習をする。
- 練習14 共分散・相関係数（定義式、実用式の比較）。10点満点のテスト2科目。
(解答)
| まとめ |
| 中央値（メジアン） | 上から数えても下から数えても、まん中のデータの値。
|
| 最頻値（モード） | 最も度数（データ数）の高い階級の、「階級値」。 |
| 定義式 | 実用式 | |
| 分散 | 「偏差の2乗」の平均 | 「2乗の平均」−「平均の2乗」 |
| 標準偏差 | 「分散」の正の平方根 | |
| 共分散 | 「偏差の積」の平均 | 「積の平均」−「平均の積」 |
| 相関係数 | 「共分散」／（「標準偏差」の積) | |