さようなら、リンリン


そんなときは、「点滴」に、限る。うちにはジェリーさんという猫がいてね、

あ、この子なんだけど、「猫免疫不全ウィルス(FIV)」、つまり「猫エイズ」陽性で、ちょうどリンリンと同じころ、やっぱり激ヤセして入院した。エイズと直接関係あるかどうかわからないが、慢性腎不全の、ほぼ末期的症状。腎臓には大きく2つの役割があるのだが、つまり、一つは血液中の老廃物を濾し取りこれを尿として排出すること、もう一つはそうやって老廃物を濾し取った水分を再び血液に戻すことなんだけど、このいずれもの機能が著しく低下してしまうと、いくら口から水分をとっても、血液は老廃物だらけで、かつ「ドロドロ」という状態になってしまう。
飼い主にできることは一つしかない。できるだけ頻繁に皮下点滴を入れて、水分補給をすること、どっちみちその水分は、ほとんど老廃物を含まない「サラサラ」の尿となって体外に排出されてしまうのだが、それでも身体全体の脱水状態を一時的には改善できる。腎臓の濾過機能の低下を補完するものとしては、「コバルジン」という名前の活性炭を経口摂取させて、それに老廃物を吸着させて糞として体外に排出する。
こうして、昨年の12月、余命一年と宣告されて退院したジェリーさんに対して、「親」である私には、動物病院から若干の技術指導の後点滴セット一式を購入して、一日一回約150ミリリットルの乳酸リンゲル液を点滴、点滴針を背中にさすことで傷口を作ってしまうから、特に免疫力の落ちているエイズ陽性猫には細菌感染を防ぐための抗生剤と、その「コバルジン」を投与する仕事が課せられた。

点滴の力はすごいよ。私たち哺乳類が、海に由来する生き物であることがわかる。この「テルモ・乳酸リンゲル液・ソルラクト」、乳酸ナトリウム乳酸カリウム混合溶液、H3C-CH(OH)-COO-Na+,H3C-CH(OH)-COO-K+、は私たちの細胞液と同じ浸透圧を持っている。それは、たぶん、海水の塩分濃度と、ほぼ、同じだ。細胞膜に負担をかけずに浸透するその「やさしい」水分は、身体の隅々に速やかに到達するのだろう。たちまち顔の表情が生き生きしてくる、たちまち食欲が回復する、そんなミラクルを何度も経験した。

今回のリンリンも、ほとんどそれでOKだったんだけどね。三日に一度くらい食欲がなくなる、点滴を入れて、猫用ミルク(無乳糖、覚えておいてね、犬猫には牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素がない。だから普通の牛乳を飲ませると、喜んで飲むけど、おなかを壊してより衰弱する)に混ぜた抗生剤を注射器(シリンジ)、これも動物病院から購入、にて投与、それで食欲が戻れば釈放、でなければ、小屋に隔離、みたいな状態が続いた。
戻るつづく