さようなら、リンリン

固形物が食べられる状態じゃない。猫用ミルクに抗生剤を混ぜて、シリンジで口に流し込む。本当は、ど素人がこんなことすべきじゃない。ちゃんと獣医さんに見てもらうべきなのだが、私は、貧乏だし、いや、給料はそこそこもらってるがこんな猫だらけだから、貧乏にもなる、だから、猫たちの医療費はなるべく削りたい、もう6年くらいの付き合いになる獣医さんも、そこんところはわかってくれていて、だからこそ、点滴セットやシリンジを販売したりしてくれているわけだ。抗生剤も、本当はそれぞれの動物の体重に見合った量を処方してもらうべきなのだが、ほかの猫が怪我したときとかにもらってきたもので余ったものをこっそりストックしていて、使い回ししている。ベストなことではないけれど、膀胱炎の症状などが、あっさりそれだけで改善したりすることもあったりしたから、そうさせてもらってる。人間はつねに、「限られた資源」で、「次善の策」をとるしかない状況で生きている。

今晩はもたないだろうな、と思った。様態の急変に気づかずにいたことを、激しく恥じたけど、それはしょうがない。誰でもくたくたになるまで働かないと生きていけないのは「世界標準」だから、文句は言わない。浴びるほどお酒を飲まないと生きていけないと思い込んでいるのは、アホだとは思うけど、こんな「狂気」に満ちた世界に「素面」で「正気」で対決できる人間はそんなにいないと思うから、大目に見てくれ!

リンリンは、ちょっとだけおなかに栄養分が入ったからなんだろう、今は一応4本の足で身体を支えている。この写真はもっと前のものだけど、そう、ちょうどこんな風に。
本当は、抱っこしたまま眠りたかった。でも、こっちの疲労も限界だったから、寝返りをうってつぶしっちゃったりしないように(!)、小屋の中で休んでもらう。ふるいTシャツを布団代わりにして、身体が冷え始めてるから、ペットボトルに60℃くらいのお湯を入れて、穴の開いた靴下にくるんでそばにおいておく。

前に、トモちゃん、て言うやっぱりエイズ猫がいてね、

あ、この子なんだけど、その子の最後の入院のときに、動物病院の先生がてきぱきと指示していたのを思い出して、まねしてみた。トモちゃんは4年前の6月21日に亡くなった。

リンリンを拾ったのは、たぶんその翌日なんだよ。勤め先の近くのコンビニ、自動ドアの前で毛づくろいしていた野良猫が、私が店に入ろうとすると、何のためらいもなくすたすたと付いて入ってきた。こいつ馬鹿なんじゃないの、とも思ったけど、ともかく猫連れて買い物もできないし、外に出した。でもなんか不思議でね。こいつ、私に拾われるって確信してる感じなの。トモちゃんが死んだばかりだったしね。・・・だから、連れて帰ってきちゃった。


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